クオータ制反対の理由② 社員エンゲージメントの問題
次にクオータ制に反対の理由二点目、社員エンゲージメントの問題です。特に日本型と言われるメンバーシップ型(※) や領域限定型の人事制度を採用している会社では、社員は昇格を目指して頑張ることになります。担当者から課長職相当、部長職相当を経て、役員を目指します。中途採用の社員も、総合職であれば入社後は同様の競争の中で昇格をめざします。
(※) 人事制度については、本ブログの人事制度シリーズ「ハイブリッド型人事制度」をご参照ください
社員には男性・女性の他にも新卒・中途、大卒・高卒などさまざまな出自や経験の社員が混在していますが、昇格するための選抜は当然ながら実力本位が大原則となります。例えば中途入社より新卒採用の社員の方が昇格しやすいとなれば、中途入社社員のモチベーションは落ちてしまうでしょう。役員や部長の数において一定比率を女性にすると宣言するクオータ制は、まさにこの問題をはらんでいます。
全員を部外者から同時に選ぶ議員や委員会などは別として、一定の社員候補者の中から昇格・登用させる会社では、女性役員のクオータ制は実力本位ではなく女性にゲタを履かせることになり、昇格を目指して頑張っている男性社員のモチベーションを下げることになります。また実際に実力があって選抜される女性社員にとっても「ゲタを履かされているのだろう」と思われることは不本意でしょうし失礼なことです。
もちろん昇格候補者以上に実力のある女性役員、女性部長を外部から採用してくることはアリですが、本当に社内の候補者より実力が上だと周囲から認められる事が必須です。そうでなければ、会社においてクオータ制を宣言することは、「実力本位ではない昇格・登用を行います」と宣言することに等しくなります。そして昇格・登用が実力どおりに行われないことくらい社員のモチベーションを下げることはないのです。
一点目の通り女性管理職の数と業績に明確な相関関係が見出せない中で、社員のエンゲージメントを下げるおそれのある制度を導入することは、合理的ではないでしょう。