自己を磨く#4

心・技・体の”心”は人間性、人格、人徳

 では最後に”心”、人間性、人格をどう磨くのかについて述べたいと思います。と言っても、これは非常に難しく、わたしが偉そうなことが言える立場ではありません。一つの意見としてお聞きいただければと思います。

 人間は哺乳類であり、大きく言えば生き物です。では人間性、他の生き物と人間の違いは何でしょうか?いろいろと違いはありますが、最も大きな違いは「自分」と対話できることでしょう。もちろん犬や猿が自分と対話していないと断言することはできませんが、「自分」という概念をもってもう一人の「自分」と対話することができるのは、たぶん人間だけです。「自分はどう生きるのか?」ということを「自分」と向き合って深く考え実践していくことが、人間性・人格を磨くことだと思います。

 人間性を磨くというと、哲学や宗教などが思い浮かびます。西洋哲学や儒教や道教などの東洋思想、キリスト教・仏教・イスラム教などの宗教など多種多様ですが、「いかに生きるのか」を深く考えるうえで、過去の哲学者や思想家の考えは大いに参考になるでしょう。

 また歴史上の人物伝などを読んで、過去の人物がどのように考え実践し結果としてどうだったのか、どういう人が人徳がある人として尊敬されているのかを知ることもとても参考になります。現実に近くにいる人で尊敬できる人がいれば、その人をなぜ尊敬できるのか、見習うべきところはどこかを考えることも大切だと思います。

 そして人間性を磨くために一番大切なことは実践です。どれだけ立派なことを考えていても実践できなければ、実際の場面で発揮することができなければ、考えていないのと同じことです。小学校の道徳の授業で教わるようなこと、ご両親から幼いころに教えてもらった「うそをついてはいけません」「他人には親切にしなさい」といった簡単なことを、愚直に実践することこそ大切です。

 「陰徳を積む」という言葉があります。人の見えない、人に知られないところで善い行いを積んでいくことです。徳のある人は陰徳を積むと言いますが、言い方を変えると陰徳を積んでいくことで人間性が磨かれるとも言えます。他人の見ていないところで落ちているゴミを拾ったりという小さくても陰徳を積む行為は、他人にアピールするのではなく「自分」に向き合う行為であり、人間性を磨くことになります。

 仏教に「諸悪莫作 衆善奉行(しょあくまくさ しゅうぜんぶぎょう)」という言葉があります。悪いことをしないようにして、善い行いをしなさいという意味です。中国の詩人白居易が高僧に禅の神髄を尋ねたところ、「諸悪莫作 衆善奉行」と言われました。白居易は「そんなことは3歳の子供でも知っていますよ」と不満そうに言ったところ、禅僧から「3歳の子供でも知っているが、80歳の老人でもなかなかできていない」とたしなめられたという逸話が残っています。大人になるといろいろ都合の良い言い訳を考えだして、かえって簡単で大切なことができていません。知っているのとやっているのでは大違い、ということを謙虚に肝に銘じたいものです。

 自己研鑽は心・技・体すべてにおいて考えているだけでは意味がなく、実践してナンボだということです。どのように自分を磨くかを良く考えることも非常に重要ですが、習慣になるまで実践することで初めて身に付きます。やってみて自分に合わなければやり方を工夫するなどいわゆるPDCAを回すことで、自己の磨き方自体もどんどん磨かれていくことになります。

 自己を磨くことは年齢、環境に関係なくいつからでもスタートでき、どこまでも成長することができます。心・技・体をバランス良く磨くことで人間として成長し、ビジネスパーソンとしての付加価値を高め、人生を楽しく前向きに歩んでいきましょう。

人事部長F について

大手金融機関で人事業務を8年、うち人事部長を4年間務めきました。 人事部長として考えてきた人事戦略・人事運営に関する考えを このブログで発信していきます。
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