人事制度#4 日本企業が導入すべきはハイブリッド型

ゼネラリストとスペシャリスト どちらも活躍できる制度へ

 メンバーシップ型の長所を述べてきましたが、特定領域で専門性の高いスペシャリストに活躍してもらうことも、会社としては絶対に必要です。

 業務知見が高いスペシャリストを処遇し育成していくという観点でも、ジョブ型のうちポスト限定型雇用制度は欠陥があります。ポストを限定してしまうと、その領域の専門家をジュニアから育成していくことが難しくなってしまうからです。

 外資系の金融機関などは、ポスト限定型ではなく業務領域限定型というべき雇用制度にしている会社が多い印象です。業務領域を限定しその中で専門性を磨きながら、成長とともに昇格していく制度です。これなら自社でジュニアを育成しながら、業務領域ごとに処遇テーブル(タイトルと処遇のマトリクス)を作成することで、中途採用でプロを高処遇で雇うことが可能となります。これからも日本でも業務領域を限定して活躍する「就社ではなく就職」したいスペシャリスト志望の若者は増えていくでしょう。

 一方で、様々な経験をして汎用的能力やリーダーシップを磨けるメンバーシップ型によるゼネラリスト育成も、見直されるべきだと思います。せっかくメンバーシップ型が根付いている日本企業では、メンバーシップ型とともにスペシャリストを育成・処遇できる業務領域限定型雇用のハイブリッド型が、これからの雇用制度として最もフィットするのではないでしょうか。

 新卒採用した若手社員は、まずはメンバーシップ型で業務適正を会社・社員双方で見極め、一人前になるタイミングで業務領域限定型に移行してプロのスペシャリストを目指すもよし、メンバーシップ型のままでゼネラリストとしてのキャリアを積んで経営者を目指すもよし、社員に選んでもらえば良いのです。

 業務領域限定型は、処遇水準は人材市場からプロのスペシャリストを中途採用できる水準にする必要があり、同じ業務のメンバーシップ型社員よりは高い処遇となるでしょう。一方業務領域限定型の社員は、能力やパフォーマンスが期待水準に達しない場合には、メンバーシップ型社員のように異動して他の業務にチャレンジすることができませんので、退職せざるを得なくなります。つまり業務領域限定型の社員は、処遇は高いがジョブセキュリティは低いという関係性になります。

 実際にわたしの所属する会社では、メンバーシップ型と業務領域限定型を併用しています。導入当初の業務領域限定型はプロ職として極めて限定的なものでしたが、いわゆる外人助っ人的位置づけから領域限定で働く社員へと定義を広げることで、業務領域限定型社員の比率は徐々に増加しています。ハイブリッド型雇用制度は、専門性を高めたい若手社員には業務領域限定型でスペシャリストのキャリアを可能にしつつ、ゼネラリスト志向の社員にはメンバーシップ型でリーダーシップや汎用的対処力を磨いてもらえる、いいとこ取りの制度だと思います。

人事部長F について

大手金融機関で人事業務を8年、うち人事部長を4年間務めきました。 人事部長として考えてきた人事戦略・人事運営に関する考えを このブログで発信していきます。
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