メンバーシップ型は若手の業務適正見極めとリーダー育成の双方に効く
メンバーシップ型の長所としては、若手がいろいろな業務を経験して適正にマッチした業務を見つける機会があることが挙げられます。また激動の時代に必要なトップリーダーの資質として、非連続的な状況に対応できる汎用的能力が必要ですが、そのようなリーダーを育成するためにも業務領域をまたいだ異動により未経験の業務に対処ことが有効です。
RANGE(デビット・エプスタイン著)という本では、「スポーツのトップ選手や有名音楽家などの芸術家、顕著な実績を残す科学者などは、ヘッドスタート(早くから専門分野を絞ること)ではなく、様々な可能性を試してゆっくり学習し、多様な知見を持っている人が多い。」「意地悪な環境(同じパターンが繰り返されない状況)では、経験よりも思考習慣、つまり経験の幅(レンジ)からいかにアナロジー(類推)を使えるかがポイントになる」と述べています。また画家のゴッホの例から、自分に何があっているか、つまり適正(マッチクオリティ)は実際にやってみるまで分からないと述べています。
海老原嗣生氏も著書「人事の企み」の中で、これからの経営者は知らない環境でも対応していける汎用的対処力が大切であり、その育成のためには非連続的で複雑性がアップする任用(つまり未経験の業務を経験すること)やタフアサインメントが有効だと述べています。
このようにメンバーシップ型雇用制度による業務領域を超えた異動は、若手の業務適正の見極めとトップリーダーの育成の両方にとても有効であり、ジョブ型制度よりも自然にそのような経験が積めることになります。
日本型メンバーシップ型雇用制度には、以上のように会社・社員双方に様々なメリットがあり、しかも導入するにはいろいろな要素(社員の汎用的能力、会社の人事権など)とセットになるため、個人主義の欧米企業が導入したくてもできない制度なのです。こんな優れた制度をよく考えもせずに欧米型を盲信して捨ててしまうようなことは、絶対に避けるべきだと思います。