基礎能力 = インプット力 → 思考力 → アウトプット力
それでは、評価項目について説明していきましょう。まずは能力のうちの基礎能力についてです。基礎能力はリーダーシップ・マネジメント力とともに全ての仕事に通じる汎用的能力です。基礎能力は「①知る」「②理解する」「③意見を持つ」「④表明する」「⑤実行する」の5項目に分かれ、個人として発揮できる能力・スペックを評価するものです。「知る」はインプット力、「理解する」「意見を持つ」は思考力、「表明する」「実行する」はアウトプット力となります。
① 知る(インプット力)
必要な知識や情報を自分自身にインプット(入力)する能力です。質の高い情報を必要十分な量だけ獲得することが、正しく思考するうえで大変重要です。
必要十分な知識・情報を収集できるか、そのためにツールを駆使したりネットワークの構築ができているか、事実(ファクト)と意見を区別できているか、アンテナ高く情報を感知できているか、アウトプットした結果のフィードバックを経験知として生かせるか、などが評価のポイントになります。
② 理解する(思考力)
インプットされた情報を整理して、理解する能力です。
論理的思考(ロジカルシンキング)ができるか、情報を深掘りして本質や真因を見極められるか、関連性を持って類推し整理できるか、直観力も駆使して本質を捉えているか、などが評価ポイントになります。
➂にも共通しますが、論理的思考力とともに切り口や目線を変えてみる柔軟性、思考意欲(考えることに積極的な姿勢)や思考体力(粘り強く考え続ける力)なども思考力を評価するうえで重要です。
③ 意見を持つ(思考力)
理解した情報をもとに、自分の意見を構築する能力です。誰かの意見ではなく、自分なりに深く考え抜いた意見を持つことはとても重要であり、リーダーにとって不可欠な能力です。
理解した情報から課題認識を持ち解決策を考えているか、スピード感をもって判断しているか、比較衡量・取捨選択・優先順位付けなどを的確に行っているか、将来あるべき姿やビジョンを描けているか、直観力、想像力の質の高さなどが評価のポイントになります。
④ 表明する(アウトプット力)
自分の意見を表明する能力です。どれだけ物事を整理して素晴らしい意見を持っていても、表明しなければ付加価値はありません。
自分の意見や疑問を勇気をもって積極的に発言しているか、ロジックをもって分かりやすく簡潔・的確に伝えられているか、文章力やプレゼンテーション力などが評価のポイントになります。
⑤ 実行する(アウトプット力)
評論家で終わらずに、実行し実現することで組織に貢献しているかを評価します。
勇気をもって挑戦しているか、言うだけ番長で終わらずに実際に行動に移しているか、能動的・積極的に行動しているか、が評価のポイントになります。実際に実行に移したことが成果に結びつくかどうかはリーダーシップ・マネジメント力や情熱・資質なども深く関係しますが、基礎能力としてはまず実行に移して粘り強く成果に向けて努力できるかどうかを評価します。
経営コンサルタントとして世界的に有名は大前研一氏は、問題解決(PSA=Problem Solving Approach)の3つのステップとして、「本質的問題の発見」「問題解決策の立案」「施策の実施」としています。その3つのステップを分解すると、今回の「基礎能力」と「リーダーシップ・マネジメント力」となります。
また、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏は、著書「人事の企み」のなかで、複雑さや変化スピードが増していく環境でのリーダーには、複雑な問題に対処できる「汎用的対処力」が必要であり、「汎用的対処力」とは課題の重要要素を素早く理解し、その分野の専門家(プロ)を使いこなすことが重要だと述べています。課題への理解力はまさに今回の「基礎能力」に該当し、専門家を使いこなす能力は「リーダーシップ・マネジメント力」と人間的魅力つまり「情熱」「資質」となるでしょう。