目標成果管理と総合能力評価
リーダーを選抜するためには、目先の実績だけを評価していてはいけないと書きましたが、実際に現場で活躍して実績を上げている人をしっかり評価してあげることが必要なのは言うまでもありません。現場で成果をあげている担当者や、チームを率いて成果を上げているチームリーダーを適切に評価し処遇してあげないと、会社の業績は成り立ちません。
西郷隆盛の言葉に「功あるものには禄を与えよ、徳あるものには地位を与えよ」いうものがあります。織田信長の言葉を引用したとも言われていますが、現在の企業に当てはめると「社員の実績には処遇で報い、人徳と能力がある社員をリーダーとして選抜すべし」と読めます。実績に報いるためにする評価と、リーダーを選抜するための評価は、目的が違うので別の評価体系を使うべきだと思います。
一定期間の活躍・実績を評価するためには、目標成果管理(MBO)が適していると思います。その期間に期待される成果が上げられたかどうかを評価し、結果は賞与などの処遇に反映させます。こちらは現場の上司の期待に応えて活躍しているかどうかを評価するものです。
一方、リーダーを選抜するのは総合能力評価です。これは言わば「こういう社員にこの会社のトップリーダーになってほしい」という姿を、評価項目によって示すものです。若手の担当者時代には相対的に重要度が高くない「資質」(人間性・人徳)についても、若手のうちから意識させます。そうでないと、役員になってから「さあ人徳が必要ですよ!」と急に言われても、一朝一夕で磨けるものではないからです。
総合能力評価には、自己評価および上司からの評価とともにいわゆる360度評価をぜひとも導入したいところです。総合能力評価の項目はいずれも定性的なものになり、どうしても主観的な評価にならざるを得ません。360度評価によって、上司からだけでなく部下や同僚、関係者からの声を聞く、つまり主観を集めて客観化することで公正性と納得性を確保することができます。上司が「愛いやつ」を評価しようとしても、横や下からの評価が低い場合は人事部が評価の適切性を指摘し、場合によっては評価を変更できます。あまりにも恣意的な評価をしている上司は、上司自身の人を見る目に疑いが持たれ評価が下がることになります。
また総合能力評価は、リーダーを選抜するとともに、社員をリーダーに育成することが大きな目的です。上司は本人の強みと課題を、360度評価での周囲の声と合わせてフィードバックし、本人に気づきと課題を与えることが重要です。